自死遺族たちのそれぞれの思い

 

今日、ハートネットTVで
「癒えない傷を抱きしめて~“自死遺族”支える母ちゃん弁護士~」
が放送されます。

この番組は、取材に協力してくれた自死遺族の方々がいてくれたからこそ、
制作できた番組です。

できれば、このまま静かに、ひっそりと・・・
愛しい人、愛しいあの子への思いを抱いたまま、そっとしておいて・・・

そう思う気持ちがありながらも、それぞれの思いから、
この番組制作のために、取材に協力してくれました。
本当にありがとうございました。
この番組は、夏にNHK広島・岡山放送局で放送された
ドキュメンタリーのリメイク版です。

あの取材の日から、約半年ほどが経過しました。
番組に出演する遺族の方々も、それぞれの道を歩んでいます。

広島の遺族の方は、高校生の息子さんを自死で亡くされた遺族の方です。
前回の放送後、お寺に修行に行き、再度自分を見つめ直そうとされています。
高校生の息子さんに一体何があったのかについては、
今でもずっと追い求めています。
今は、生前の息子さんの動向及び遺品から、
息子さんの心理分析をしてくれる専門家を探しています。
私も弁護士として、できる限り尽力したいと思ってます。
そして、学校の問題は、いじめの問題だけではなく、
指導死という教師の行き過ぎた指導が原因で自死する子どもたちがいることも
多くの方に理解していただければと思います。

大分の遺族の方は、まだ20代の一人娘の佳奈さん
を自死で亡くされた遺族の方(森下さんご夫婦)です。
今回の放送から実名を公表しています。
前回の放送では公表できなかったのに、今回の放送では実名で出演されます。
大変大きな決断だったと思っています。
実名での番組出演に踏み切った理由は、
「亡くなった佳奈と一緒に戦いたい」
「亡くなった佳奈は自慢の娘で隠す必要はない」
などの思いがあったからだと聞いています。
愛しい佳奈さんは、初めての就職でがんばっていたものの、
非常勤職員なのに常勤職員と同様の困難な相談業務を担っていたうえ、
上司からパワハラを受けるなどして、
心も体もボロボロになっていきました。
それでも、自分がどんなに苦しくても、
相談者のことを考えるような娘さんでした。
私も弁護士として、一緒に戦います。
来年には、訴訟を提起する予定です。
また、非常勤職員に対し不合理な差別がされないよう、
働きかけていく予定です。

今日の朝日新聞の夕刊に、大きく掲載されました。
http://www.asahi.com/articles/ASJD94QC0JD9PTIL00S.html

非常勤職員は亡くなった後にも差別されているのです。

そして、東京の遺族の方、居木史子さん。
夫を自死で亡くされた方です。
今、自宅でアロマセラピーサロンを開業し、多くの方を癒しています。
私も、癒されている一人です。

詳しくは、史子さんのHPを見てください。
http://lachou-chou.ivory.ne.jp/

史子さんも、今回の番組を前に、息子さんに初めて、
夫の自死について話をしたそうです。
子どもに親の自死について話すのは、
本当に大きな大きな勇気が必要です・・・
私も子どもたちに話をしましたが、話をしてよかったのかどうか、
今でも悩んでいます・・・
子どもたちにはずっと言わないでおくという選択肢をとってもいいと思います。

それぞれの遺族の方の声を聴いて、
「自死って何だろう」
「自死を予防するためにはどうしたらいいのか」
「自死遺族にどんなふうに接したらいいのか」
などなど、考えていただければと思います。

そして、私たち遺族の一番の願いは
「あの愛しい人に帰ってきてほしい」
叶わぬ願いだと知りながらも、それでも願ってしまう私たちの思い・・・
私たち遺族の思いを理解していただければと思います。

最後に、遺族の方々それぞれに、
それぞれの思いがあることも理解してくださいね。
それぞれの思いを大切にしていただきたい・・・

涙があふれてしまう・・・

9月17日土曜日、広島弁護士会館で、「小さな一歩・ネットワーク広島」主催で、
「生きづらさ」を分かちあうフォーラム(詳しくは、ここをクリック)が行わわれました。

NPO法人白浜レスキューネットワーク代表の藤藪庸一さんの基調講演をはじめ、
生きづらさを抱えている当事者の発表がありました。

その当事者の発表の中で、二人の自死遺族の方が話をしてくれました。
二人とも、今回初めての発表。
知らない人の前で、自死遺族としての体験談を初めて話す。
きっと、いろいろ悩んだと思うし、勇気も必要だったと思います。

初めての発表なのに、とても落ち着いた感じで話し始めた二人。
ですが・・・二人とも、やはり涙があふれ出て、最後には涙声になっていました。
二人とも、「泣くまい」と強く思っていたそうですが・・・

心ならずも泣いてしまったことで、恥ずかしそうでしたが、
涙は自然にあふれるもの。
その涙は、愛おしいという思いがあふれ出しているもの。
だから、恥ずかしがらなくていいの・・・

私には、二人の涙が愛おしくて愛おしくてたまりませんでした。
勇気を出して、話をしてくれて、本当にありがとうございました。

と言いながら・・・
私も、講演では、いつも泣いてしまう・・・
だからいつも、「今日こそ泣かない」って思って講演をしているんです。
私だって、人前泣くのは、やっぱり恥ずかしいから・・・

でも、涙があふれ出てくることを止められないんです。
もう何度も講演しているのに・・・
愛しい人のことを思い出してしまうと、
熱いものがこみあげてきて、泣いてしまうんです。
きっと、今でも愛おしいと思っているから。
一間で泣くなんて恥ずかしいと思っているのに、
でも、あの人が愛おしいから、
自然に涙があふれ出るんです。

今でも会いたいもの。

生きたかったのに、生きられなかった、私たちの愛しい人。
あなたがいなくなって、
悲しくて、つらくて、
あなたのもとに行きたいと思うときもあるけど、
ここでがんばって生き続けます・・・
いつか、あなたに会えたとき、
たくさんの話をしたいから。

でも、このつらい、やるせない思いは、私たちだけでもうたくさん。
もう誰も死なないで・・・お願いだから。

どうか、私たちの思いが皆さんに届きますように・・・

自死対策に携わる保健師さんたち

先日、岩手で講演した時も、相談者の立場になって、
何とかしたいとがんばっている保健師さんたちに
会いました~!
その熱意が伝わってくるような保健師さんたちでした!

日本の自死対策に携わる人って、
行政の現場では「保健師さんたち」なのですよ~
皆さん、知っていました?
私は、自死問題に携わるまで全く知らなかったのです・・・

保健師さんと言えば、
子どもの定期検診の時に会ったり、
育児の相談相手と思っていました~
でも、実際には、心のなやみ相談なども担当していて、
なんでも相談に乗ってくれるんです。

災害が起こったりすると、一時避難所などに出かけて、
いろんな悩みを聴くのも保健師さんたちなんです。

すごいなあ~って、思っています。
岩手の講演の後も、岩手の被災者支援のことで、
ほんとに熱心に協議されていました~
保健師さん、働きすぎではないかと心配するくらいです・・・

でも、熱心な保健師さんたちの姿って、すごく力をもらえるんです!
ああ、私も頑張らなくちゃって思えるんです。
きっと、保健師さんたちの「何とかしたい!」っていう純真な熱意が、
私にそう思わせるのだと思います。
熱心な保健師さんたちには、心から感謝しています。

昨日も、群馬の保健師さんから、
「先生の講演での資料や内容を元に、
自死問題を検討するための実例を作成したのですが、
使ってもいいでしょうか?」
といううれしい申し出がありました。

私の資料でよければ、どんどん使ってほしいです!
私の講演を元に、さらにそれをまとめて、
次の検討資料を作ってくれたことに、
本当に感謝しています。
ありがとうございます!

一方で、「保健師さんに傷つけられた」
という自死遺族の声も聴きます。

たしかに・・・
保健師さんと言っても、
いろんな方がいます。
傷つけたくなかったのに、傷つけてしまったのかもしれません。

でも、過度に遺族の方をこわがったり、逃げたりしないでほしいのです。

目の前の相談者のことを真剣に考え、
何とかしよう、できることはしたいと思っている、
そのあなたの思いは必ず伝わります。

自死遺族からの相談にも熱心に応じてくれる保健師さんが増え、
自死遺族に対する支援の輪が広がることを願っています。

やさしくリニューアル

ふと、ホームページをリニューアルしたくなり、
リニューアルしました~!

今回のテーマは、「やさしい感じ」

いろんな自死遺族の方の相談を受け、
時には、ひどい対応に憤りを覚えることもある中、
努めて冷静に・・・
と思う今日この頃。

また、自死遺族の方からの相談の中には、
その方の要望を法的に何とかできないこともあり、
お力になれないと回答せざるを得ないことがあって・・・
「お力になれなくてごめんなさい」
と謝る日もあります。

気持ちに応えてあげたくても、
法的に請求は難しいこともあって、
そいうときは、ちゃんと説明して、
法的な請求はあきらめてもらうしかない・・・

そういうときは、私もつらいけれど、
難しいことは難しいと、
止めた方がいいことは止めた方がいいと
回答することも、
弁護士としての私の仕事。

思うようにいかないことも少なくないのです・・・

だからこそ、悩んで苦しんでいる遺族の方にとって、
せめて、やさしい気持ちになれるサイトに
したいなあと。

と思い、リニューアルしました。

多くの自死遺族の方にとって、
やさしい気持ちになれるサイトになりますように・・・

講演を終えてー

今回は、岩手県の一関市で講演をさせていただきました。

約160名という多くの方々にご来場いただき、本当にどうもありがとうございました!

ご来場者の中には、自死遺族の方もいらっしゃいました。

いつも思うんです、

私の話は、自死遺族の方にはつらいんじゃないかなって・・・

だって、私の話を聴いたら、きっと、あのつらい体験を思い出してしまうから・・・

つらい思いをさせて、ごめんなさい。

できれば、思い出したくない、

うそであってほしい、

私だって、何度目が覚めても、あの日が間違いであってほしいと。

間違いじゃないなら、目を覚ましたくない、

認めたくない、

受け入れられない、

苦しいし、悲しいし、もうぐちゃぐちゃ・・・

私は、ずっと、主人の死を受け入れられなかった。

今は、主人の死を受け入れられていると思う、多分。

今の私は、主人の思いをここに抱いているから。

悲しみと愛おしさと、いろんな思いを込めて・・・

でも、自死遺族の方の思いは、人それぞれ。

私と同じ思いをしている人もいるけど、違う人もいる。

100人いれば、100とおりの想いがある。

私の講演を聴いて、いろいろ感じてくれたり、考えてくれたらいいなと。

消えない悲しみとつらさ、でも、愛おしく感じられる自責の想い。

 

また、10月、11月、12月と、講演が続きますが、

「自死は追い込まれた末の死」であり、自死遺族の思いを少しでも伝えることができるよう、がんばります。

弁護士としてではなく、自死遺族として、経験や思いを語ることは今でも正直怖いです。

でも、私のことを理解してくれる人や、活動を応援してくれる人がいてくれるから・・・

いつも支えてくれてありがとうございます。

そして、支援者の方にお願いがあります。

いろんな自死遺族の方がいて、思いも人それぞれであることを理解してください。

研修を否定はしませんが、マニュアルなどに捕らわれず、目の前の自死遺族の方をよく見て、よく話を聴いて、気持ちを込めて声をかけてください。

形だけの言葉は、むしろ傷つけます。

言葉だけで癒されることはほとんどないと思います。

言葉に伴うあなたの気持ちで癒されることはあっても・・・

そして、私も含め、弁護士などの専門家にも知っていただきたいことがあります。

どんな聴き取りなどの技術を身に付けたとしても、

自死遺族の方から話を聴くということだけで、傷つけてしまっているということを。

だから、話を聴いた後のケアをしてくださいね。

専門家ほど、実は、自死遺族の方を傷つけやすいのですから・・・

私も、日々反省しています。

 

 

いろいろ考えてほしい

7月9日土曜日、広島市で講演「私は生きたい!」を行いました。
貴重なお休みの日、有料での講演(熊本チャリティー講演のため寄付)ということもあり、
どのくらいの方に来ていただけるのか・・・不安でしたが・・・

主催者の迫田先生をはじめ、広島県外からの参加者もあり、
多くの方々にご参加いただき、本当にどうもありがとうございました。
4時半から6時までの予定だったのですが、私が勘違いをして、
6時半まで話をしてしまいましたが・・・
最後まで聴いていただき、またその後も意見交換などに残ってくださり、とてもうれしかったです。

意見交換の場では、もっと多くの方とお話しできればよかったのですが・・・
お話ができなかった方、ごめんなさい・・・
もしよろしければ、メールなどでもいいですから、ご連絡いただければうれしいです。

皆さんの感想で、一番うれしい言葉は、
「いろいろ考えさせられました」
という言葉。

私も、みなさんに、いろいろ考えてほしいので、
そう言ってもらえると、ほんとにうれしいです。

自死遺族と言っても、立場や状況も人それぞれ。
それでも、自死遺族の方にもそう言ってもらえると、
ほんとにうれしかったです。
「先生の話を聴いてよかった・・・」
きっと、私の体験談は、聴くのもつらかったでしょうに・・・

自死遺族ではない方にも、
「いろいろ考えさせられました」
「来てよかった・・・」
「何かきっかけがほしかった・・・」
などなど。
私の講演を聴いて、何かを考えるきっかけになれたのなら、ほんとにうれしい・・・

もちろん、自死問題や自死遺族支援についても考えてほしい。
でも、まずは、自分の問題と結びつけて、いろいろ考えてほしい。
自分の問題と結びつけて考えることが大切だから。
そう、自死は、自分や家族、誰にでも起こることだから・・・

絶対に自死しないと言える人はいない。
私の主人は、強くて頑張り屋さんで、自死するなんて考えたことはなかった。
私も、今こうして弁護士として多くの事件で戦っているが、
手首に包丁を当てたことがある・・・

自死は、その人の資質の問題ではない、
自死に至るほど、追い詰められるほどの理由がある。
どんなに強くても、人は、追い詰められれば、自死してしまう可能性がある。

「同じ職場で、○○さんだけが死んだんだから、会社に責任はない」
などと言う人がいる。
なるほど、長時間労働をしても、自死する人としない人がいる。
だから、自死する人に問題があると考えてしまうの???
それは、違う。
自死する人に問題があるのではなく、
自死しな人はギリギリのところで我慢しているだけだし、
自死する人がしない人よりもより多くのストレスにさらされていたから。
自死する人に問題があるんじゃない。
自死する人に問題があるというのは、
会社や周りの人が自分の責任から逃れるために使う言葉。

自死した人に何が起こったのか調査していくと、
その職場や学校でも何かしらの異変がある。
同じ職場の中で辞める人がいたりする。

「○○さんが自死したから、他の人も自死しそうだよ」
「ちゃんと調査して、環境を改善していこう」
そう考えてほしい。
そう考えてくれなければ、自死はなくならない。

幸い、今のところ、自死者は減少傾向にある。
でも、毎年2万人以上もの人が自死で亡くなっていて、
自死遺族はその倍以上も増えているはず。

先日の講演でも、どの講演でも、
「実は、私も自死遺族なんです」
と話をしてくれる遺族の方がいる。
きっと、自死遺族であると誰にも打ち明けないで生活している遺族は多い。

そして、今日もまた、私のもとに、自死遺族の方から相談が寄せられている。
「未だに納得がいきません」

自死遺族への説明責任も果たしてほしいと切に願う。

ねむの木と共に・・・

今日は、ある女の子を紹介させてください。

その女の子は、夢も希望もたくさん持っていました。
勉強を頑張って、大学、大学院を卒業して、やりたい仕事にも就きました。
そして、女の子は、来る日も来る日も、自分を頼ってくる人たちの力になろうと、懸命に仕事に励みました。

そんなある日、女の子に異変が生じます。
「疲れた・・・仕事に行きたくない・・・」

その女の子は、上司からのパワハラに悩み苦しみ、うつ病になりました・・・

それでも、女の子は・・・がんばり続けました・・・

「笑顔!
 笑顔!笑顔!
 たとえ体調が悪くても、笑顔でいよう!
 無理のない程度に。

 今日もうちのお花たちは笑顔!
 私も負けないようにがんばろ!」

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今、写真のねむの木は、ご両親の愛情を受け、すくすくと育っています。
でも、ねむの木と共にがんばり続けた女の子はもういない・・・

ねむの木は、夜になると、そっと葉を休ませます。
もう、ゆっくり休んでね・・・
ねむの木に包まれて、穏やかに・・・

みなさんには、ほんとに、よく考えてほしい・・・
周りの人を不用意に傷つけていないだろうかと、
もし傷つけたら、ちゃんと心から謝まってくださいね。

弱いから、傷つきやすいのではないですよ、
ひどいことを言ったりしなければ、傷つかないのですよ、
受け止める側の問題ではなく、する側の問題なのです。
受け止める側の問題にしたいのは、
する側が自分が悪いと認めたくないから、
する側が自分を正当化するために、
そう言っているのです。

女の子は、上司からパワハラを受けても、
「絶対負けない!」
と、ほんとにがんばったんです!
弱くなんかない、
たった一人で、何十倍もの力ある相手と戦って力尽きた・・・
ずっと笑顔を絶やさずに・・・

私は、その女の子を尊敬しています。

マニュアルの弊害

マニュアル・・・○○のためのマニュアル・・・マニュアルマニュアル、
巷に溢れている。
自死予防のためのゲートキーパーの相談対応マニュアル。
遺族に対する相談対応マニュアル。
マニュアルの中で、心構えの他、言ってはいけない言葉と言ってもよい言葉の例などが記載されている。
悪い例と良い例が記載されているものもある。
悪い例は、ほんとに悪い例。
良い例は、ほとんどこんなふうにうまくいかないだろうっていう例。
読んで、参考程度にはなるかもしれない。
でも、このマニュアルのとおりにすれば、それで大丈夫というものではない!

マニュアルが大切にされるのは、よくわかる。
誰だって、できればマニュアルがほしいと思う。
新人や経験の少ない人にとっては、マニュアルは必要だろうとも思う。
でも、よく考えてほしい。
マニュアルは、一体誰のためのもの?
相談者のため?それとも相談員のため???
マニュアルは、誤った相談対応で相談者が余計に苦しむのを防ぎ、適切な対応をするためのものであるから、相談者のためのもの?
それとも、マニュアル通りにしていればいいのだから、相談員のためのもの?
本来であれば、相談者のためであり、相談員のためであるはず。
でも、私からすれば、相談員のためのマニュアルになっている気がしてならない。
少なくとも、マニュアルを使って対応するのは相談員。
相談員が、マニュアル通りにすればいいと思って使えば、マニュアルは百害あって一利なし。

ある遺族の悲痛な訴え。
「先生、最近は、私にがんばれと言う人はいないけど、私に、亡くなった娘の分まで生きなさいっていう人は多い。そんなマニュアルがあるのかって思うくらい・・・」
この方は、まだ未成年の娘さんを亡くされた方。
「私が、娘の分まで生きれるわけないじゃない」
「一体、私はいつまで生きていたら、娘のところに行けるの?」
「こんなに苦しいのに、一体いつまで生きなきゃいけないの?」
「教えて、先生・・・」
私のもとに相談に来られる遺族の方は、マニュアルでは対応できない。
返す言葉が見つからないことも多い。
「ごめんなさい・・・私にもわからない・・・」
返す言葉が見つからず、こう答えることもある。
きっと、私の言葉はマニュアルにない言葉だし、私の中にもマニュアルはない。
真剣に話を聴いて、真剣に考えて、真剣に言葉を返す。
それが、私のすべきこと。

「先生、もう(亡くなった)妻のもとに行きたい」と言われる遺族の方。
「まだ行かないで・・・お願いだから」と懸命に止めようとする私。
どうしたら、力になれるのか・・・悩みながら、何とかしたいと考える。
もっと話を聴いて、何とかしたい。
できる限りのことはしたい。

マニュアルなんて、ない。
その場限りの対応で、何とかなるものではない。
表面を着飾ったところで、そんなもの、すぐにわかってしまう。

大切なことは、どれだけ真剣に向き合えるのか、である。

それなのに、「マニュアル通りこう言っておけば大丈夫」というようにマニュアルが使われるのならば、マニュアルなんてない方がいい!
マニュアルは参考にするのはいいけれど、マニュアル通りにすればいいってものではない。
それなのに・・・
マニュアルが、一人歩きをし、相談者を傷つけている。

ある人がこう教えてくれた。
私の娘は、「絶対公務員にはならない!」「これ以上はするな、こうしてればそれでいい、他の人と同じようにしろ、とか・・・全然相談者のためになってない!おかしいよ」って言っていたと。
本当に、そのとおり!
一人ひとり、対応は異なる。そんなの当たり前。一人ひとり、悩みも考え方も違うのだから。
他の人と同じようにできはしない。
こうしていればすむ話でもない。
そう、相談対応に、本来マニュアルなんてものはない。
マニュアルに頼ってはいけない。
マニュアル通りにすれば、かえって相談者を傷つける。
なのに、マニュアルに頼りすぎている、相談現場。

マニュアル・・・マニュアル・・・マニュアル・・・
マニュアルで対応できないのに、それでもマニュアルに頼り、相談者を傷つける。

すでに傷つきボロボロの状態の相談者には、表面的な対応かどうかすぐにわかる。
この人は信頼できる人かどうか・・・
すがりつくような思いであなたを見ているから。

娘さんのように、気づいてほしい。
大切なことは、マニュアルじゃない、
相談者と真剣に向き合う、その心だと!
だから、その人のためにどうしたらいいのかと真剣に悩み、必要に応じて、今までとは違う対応もする。

すべては、目の前にいる相談者のために。

もっと、よく相談者を見て、
相談者のために、考えて。
そう、切に願う。

思いは伝わる

3月は、自死に関する講演を2回させていただきました。
自死の問題に関心を持ってくださる方、支援してくださる方がいて、初めてできる講演。

ああ、一人じゃない・・・
こんなに、自死の問題に心を寄せてくれる人がいる・・・
本当にありがとう・・・

私の講演には、いつも、自死遺族の方々が聴きに来てくれる。
そして、最後に、私のところに、あいさつに来てくれる人もいる。
そう、きっと、大きな大きな勇気を振り絞って・・・

今回も、多くの自死遺族の方と話ができました。
「先生に会いたかった・・・」
「先生もつらいのに・・・よく話してくれました、ありがとうございます・・・」
「先生の講演を聞いて、私も、当時のことを思い出し、自分のことのように思って聴いていました・・・」
そんな言葉を聞くと、いつも熱いものがこみ上げてくる・・・
私に、力を運んでくれる。

ああ、がんばらなくては!

そして、支援する方からも、話しかけられる。
自死の問題、自死遺族の支援にも関心を寄せてくださるだけで、
私としては、とてもうれしい。心からの感謝。
でも、できれば、もっと関心を抱いて、もっと関わってほしい。
もっともっと、つい力が入ってしまう私。

そんな私に、支援する側の人がよく聞いてくる質問がある。

自死遺族の人を傷つけないようにするには、どうしたらいいですか

この質問は、講演の度に必ずと言っていいほど聞かれる質問。
この質問をしたい気持ちもよくわかる。
自死遺族の方を傷つけたくないからこその質問だから。
でもね・・・
私は、いつもこう答えている。

「自死遺族の人を傷つけない人はいないと思います。
自死遺族の私も、他の自死遺族の方を傷つけてしまうことはあると思っています。
それは、自死遺族の方はそれぞれ考えや状況も違うし、
感じ方が人それぞれですから、傷つけないようにしても、
傷つけてしまうことがあるからです。
 ただ、思いは伝わります。
 自死遺族の方を真剣に思う気持ち、それは伝わります
 その真剣な思いで、自死遺族の方に声をかけてください。

そう・・・自死遺族を傷つけなくて済む、そんなマニュアルなんてない・・・
自死遺族の方の多くは、十分すぎるほどに傷ついているから、人の言葉や表情に敏感になっていることが多い。
傷つきやすい人もいる。

小手先ですむ支援なら、むしろしないでほしい。
きっと、そんな支援は、自死遺族を傷つけるだけだから・・・

思いが一番大切。
その人を心から思う気持ちは伝わる。
だから、自死遺族の方と向き合うときは、真剣に。
どんな言葉をかけようかと悩み、
傷つけないようにどうしたらいいのか悩んで、
それから、かけた言葉や行動ならば、
たとえ、自死遺族の人を傷つけることになったとしても、
自死遺族の人の傷は大きく広がることはない。
そう、あなたのその思いは伝わるから。
あなたがその遺族の方を思う気持ちが本物であるなら、
いつか、あなたを信頼する時が来るはず。

私は、いつも心をさらけ出して、自死遺族の方と向き合うようにしている。

どうか、自死の問題に携わる方々、自死遺族の支援に尽力してくださる方々には、
自分のその思いを大切に、真剣に自死遺族の方と向き合ってほしい。
それが、自死遺族の方のためになるのだから。

伝えたい思い

今日も、ある自死遺族の方の話をさせていただきます。

今までもですが、自死遺族の方の中には、皆さんに知ってもらいたいという思いを抱いている方々がいます。
ただ、いろんな事情や思いから、なかなか自分から発信することができない・・・
でも、知ってもらいたい、伝えたい・・・

私も、そう願うご遺族の方々の思いに応えたい。

今回の話は、お姉さんを自死で亡くされた方のお話です。

お姉さんは、ある男性と結婚されました。
しばらくの間は、幸せな結婚生活を送っていたのですが、
ある日、夫から離婚を切り出され、夫は自宅を出て行ったそうです。
離婚の原因はよくわからないのですが、子どもを作るか作らないかで、夫婦の間で意見が分かれていたそうです。
夫は、弁護士に依頼し、離婚調停を申立てました。
そして、調停から裁判へと・・・
お姉さんは、理不尽な夫の言動に悩み、苦しみ・・・
そして・・・自死されました

夫からの様々な理不尽な対応やその両親からの心ない言葉・・・
詳しく書けないのですが・・・
その他にも、半年近くも婚姻費用も支払ってもらえず、経済的にも追いつめられるなど・・・
自死せざるを得ないような対応があったようです・・・

そして、さらに、ご遺族に追い打ちをかける出来事が起こります。

それは、お姉さんの元夫から依頼を受けた弁護士からの一枚のFAX・・・
まだ、子どもを自死で失くし、悲しみなどで茫然自失の状態の父に対し、
ある金額を提示したうえ、これで互いに債権債務なしという合意に応じるよう求めるものでした。

亡くなって2週間も経たない頃の話です。
それも、FAXって!??????
同じ弁護士として、恥ずかしい・・・
人として、このような対応はあまりにもひどい・・・

ご遺族である妹さんの言葉を紹介します。

☆私がさらに子どもを作るかどうか悩んでいたとき、
「私が子どもを産まなかったから、私の分までもう一人、
○○ちゃんにそっくりな女の子を産んでね~」
と姉が言ってくれました。
 だから悩みます。
 姉のために、自分の家族の幸せを考えて生きていくのか、
 でも、なぜ、姉が追い詰められて亡くならなければならなかったのか、
 そう思うと、悔しい気持ちになります。
 本当に無念でなりません☆

無念の思い・・・
毎日ぐるぐるの思い・・・
きっと、多くの遺族の方ならわかってくれる思い・・・

そして、強く思う。
もうこれ以上、遺族を傷つけないで・・・
お願いだから・・・