マニュアル・・・○○のためのマニュアル・・・マニュアルマニュアル、
巷に溢れている。
自死予防のためのゲートキーパーの相談対応マニュアル。
遺族に対する相談対応マニュアル。
マニュアルの中で、心構えの他、言ってはいけない言葉と言ってもよい言葉の例などが記載されている。
悪い例と良い例が記載されているものもある。
悪い例は、ほんとに悪い例。
良い例は、ほとんどこんなふうにうまくいかないだろうっていう例。
読んで、参考程度にはなるかもしれない。
でも、このマニュアルのとおりにすれば、それで大丈夫というものではない!
マニュアルが大切にされるのは、よくわかる。
誰だって、できればマニュアルがほしいと思う。
新人や経験の少ない人にとっては、マニュアルは必要だろうとも思う。
でも、よく考えてほしい。
マニュアルは、一体誰のためのもの?
相談者のため?それとも相談員のため???
マニュアルは、誤った相談対応で相談者が余計に苦しむのを防ぎ、適切な対応をするためのものであるから、相談者のためのもの?
それとも、マニュアル通りにしていればいいのだから、相談員のためのもの?
本来であれば、相談者のためであり、相談員のためであるはず。
でも、私からすれば、相談員のためのマニュアルになっている気がしてならない。
少なくとも、マニュアルを使って対応するのは相談員。
相談員が、マニュアル通りにすればいいと思って使えば、マニュアルは百害あって一利なし。
ある遺族の悲痛な訴え。
「先生、最近は、私にがんばれと言う人はいないけど、私に、亡くなった娘の分まで生きなさいっていう人は多い。そんなマニュアルがあるのかって思うくらい・・・」
この方は、まだ未成年の娘さんを亡くされた方。
「私が、娘の分まで生きれるわけないじゃない」
「一体、私はいつまで生きていたら、娘のところに行けるの?」
「こんなに苦しいのに、一体いつまで生きなきゃいけないの?」
「教えて、先生・・・」
私のもとに相談に来られる遺族の方は、マニュアルでは対応できない。
返す言葉が見つからないことも多い。
「ごめんなさい・・・私にもわからない・・・」
返す言葉が見つからず、こう答えることもある。
きっと、私の言葉はマニュアルにない言葉だし、私の中にもマニュアルはない。
真剣に話を聴いて、真剣に考えて、真剣に言葉を返す。
それが、私のすべきこと。
「先生、もう(亡くなった)妻のもとに行きたい」と言われる遺族の方。
「まだ行かないで・・・お願いだから」と懸命に止めようとする私。
どうしたら、力になれるのか・・・悩みながら、何とかしたいと考える。
もっと話を聴いて、何とかしたい。
できる限りのことはしたい。
マニュアルなんて、ない。
その場限りの対応で、何とかなるものではない。
表面を着飾ったところで、そんなもの、すぐにわかってしまう。
大切なことは、どれだけ真剣に向き合えるのか、である。
それなのに、「マニュアル通りこう言っておけば大丈夫」というようにマニュアルが使われるのならば、マニュアルなんてない方がいい!
マニュアルは参考にするのはいいけれど、マニュアル通りにすればいいってものではない。
それなのに・・・
マニュアルが、一人歩きをし、相談者を傷つけている。
ある人がこう教えてくれた。
私の娘は、「絶対公務員にはならない!」「これ以上はするな、こうしてればそれでいい、他の人と同じようにしろ、とか・・・全然相談者のためになってない!おかしいよ」って言っていたと。
本当に、そのとおり!
一人ひとり、対応は異なる。そんなの当たり前。一人ひとり、悩みも考え方も違うのだから。
他の人と同じようにできはしない。
こうしていればすむ話でもない。
そう、相談対応に、本来マニュアルなんてものはない。
マニュアルに頼ってはいけない。
マニュアル通りにすれば、かえって相談者を傷つける。
なのに、マニュアルに頼りすぎている、相談現場。
マニュアル・・・マニュアル・・・マニュアル・・・
マニュアルで対応できないのに、それでもマニュアルに頼り、相談者を傷つける。
すでに傷つきボロボロの状態の相談者には、表面的な対応かどうかすぐにわかる。
この人は信頼できる人かどうか・・・
すがりつくような思いであなたを見ているから。
娘さんのように、気づいてほしい。
大切なことは、マニュアルじゃない、
相談者と真剣に向き合う、その心だと!
だから、その人のためにどうしたらいいのかと真剣に悩み、必要に応じて、今までとは違う対応もする。
すべては、目の前にいる相談者のために。
もっと、よく相談者を見て、
相談者のために、考えて。
そう、切に願う。